2022.6  信心と人間いかに生きるかということについて
 
 紀野先生が八十八歳の米寿を迎えられるので新しくCDを制作しようということで、放送局に勤めているW君や数名で先生のお話しを録音したことがある。
 私は、その頃、毎月8日前後は先生の御伴をしていたのだから、いくらでも先生に質問をすることができたのだが、一対一でいるときに先生に質問したことは、あまり記憶にない。
 その日だけは、やはり聞いておきたいなと思い「人間いかに生きるのが良いのかといことについてお話しください」と、お願いした。
 先生は、
 「人間いかにいきるかという問題は、なかなか結論が出ない。だから人は、途中でやめてしまう。そんなことでは哲学の勉強はできないよね」
 とおっしゃった。確かに多くの人が、考えることをやめてしまう問題なのかもしれない。
 私も、いまだに考えているけど、結論は出ていない。
 また、この問題が哲学の問題だということは、仏教とは違うということかもしれない。
 
 私は、今も、哲学的、学問的、知識的に仏教をわかろうとしているのかもしれない。
 
 仏教は、衆生無辺誓願度(しゅじょうむへんせいがんど)、すべての人々を幸せに導こうという願いを大切にしている。
 ありがたい教えだけれど、そこに命までかけようとは思わない。
 信心とはいうけれど、なかなか仏を信じることも難しい。
 仏の力で奇跡でも見せていただければ、多くの人が信じるだろうけれど、仏は神通力など特別な力を使うことを否定していらっしゃる。
 私たちは、自分の人生の中で、しみじみと仏の言葉や、優れた仏法者の言葉を聞き、そしてそれぞれの仏法の師にめぐりあい、仏を信じるようになるしかない。
 厳しい修業などをして悟りを開くことは、ほとんどの人ができない。
 ましてや、今現在では、お坊様を含め、悟ったものなどいないのかもしれないと思ったりもする。
 おそらく、悟りとは、虚空を感じ取り、生きながら死んで死にぬき、自分というものがなくなり、ただある、というような世界なのだろうという予測はできる。
 簡単に言えば、自分のことなど一切考えず人の幸せを心底願えるような世界だろう。
 いやいや、何にもない、無の境地。天地いっぱいにひろがる自由な世界。
 
 いくら表現しても、わからないものは表現しきれない。
 おまけに、悟っても、それは説明などできない世界だというから、どうしようもない。
 
 そういえば、私は先生に何気なく聞いたことはある。
 「先生には、悟りがありますか」
 先生は、
 「あるよ。それでなければ仏教について、みんなに語ったりはできないよ。」
 私は、さらに聞いた。
 「その悟りはどんなものなのですか」
 先生は、
 「まあ、紀野教(キノキョウ)だな」
 
たぶん池上本門寺に向かう車の中で、渋滞中に質問したのだと思う。
先生は、さりげなくジョークを交えられるから、ひょっとすると、
 「昨日(キノウ)は今日(キョウ)だな}
という、言葉にひっかけられたのかも知れない。
 
先生は、仏教は一元論だとおっしゃる。
神も仏も私も一緒。
過去も現在も未来も一緒。
というような世界を、キノキョウ(昨日は今日)と、私をからかっておっしゃたのかも知れない。
 
 
まあ、おそらく考えても考えても哲学的、学問的、知識的なものでは悟りは得ることができない。
 
 先生は、町中の小さなお地蔵様でも、さっと手をあわせて礼拝される。
 谷中の全生庵で法話の席に着く前に、本堂のお釈迦様の前を通るときには、誰も見ていないけれど、両手を合わせて深く礼拝される。
 先生を見ていると、仏様はいらっしゃるのだなと思わされてしまう。
 しかし、私には深い信心はない。
 でも先生にお会いして、仏様はいらっしゃると感じることができただけでも幸せだ。
 
 仏に手を合わせたことがないような学者が、仏教を語るのが、今の世の中だ。
 仏教は学問ではないですよ。
 
 仏を信じ、敬っていらっしゃる方も多いことと思います。
 そういう思いを大切にしてください。
 
 
「いかに生きるか」。
先生はおっしゃた。
「自分がいいと思えば、それでいいじゃないか。人から良くおもわれようなんて、そんなことじゃ駄目だ」
はい、もっと自分らしく、生きます。





今は亡き、わが師(紀野一義先生)の教えです。
いかに生きていけばよいのか、わからなくなったときのよりどころとしています。

 自誓

    
一、心ひろびろと、さわやかに生きん。
   一、真実をもとめてひとすじに生きん。
   一、おおぜいの人々の幸せのために生きん。



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